
児発管が職員育成に時間を割けないのは、気持ちや意欲の問題ではなく、育成が「空いた時間」に頼る設計になっていることが原因だと考えています。対策は、まとまった時間を新しく作ることではなく、週の予定に短い育成の枠を先に置くこと、場面を1つだけ言葉にする短い振り返りの型を持つこと、記録や申し送りに育成の観点を1行足すこと。この3つの小さな仕組みから始める形が、現場では回しやすいと思っています。
計画書、会議、保護者対応、送迎の調整。目の前の仕事を片づけているうちに一日が終わり、「育成の時間は、また明日」になってしまう。児童発達支援管理責任者(児発管)や管理者の方なら、身に覚えがあるのではないでしょうか。
この記事では、育成の時間が消えてしまう理由を整理したうえで、忙しい現場でも無理なく回せる「まず仕組みにできること」を3つ紹介します。
この記事の要点
- 育成が後回しになるのは気持ちの問題ではなく、育成を「空いた時間」に頼っている時間の設計の問題です
- 空いた時間は、忙しい日ほど生まれません。育成は予定のあとではなく、予定の中に先に置くものです
- 仕組みは小さくてかまいません。短い枠、1場面だけの振り返り、記録への1行。この3つから始められます
育成の時間が消えてしまうのは「空いた時間」に頼っているから
育成の時間が確保できない最大の理由は、育成が予定に入っておらず、「落ち着いたらやろう」という扱いになっていることです。
空いた時間は、放デイの現場ではほとんど生まれない
放課後等デイサービスの現場は、予定どおりに進む日のほうが少ないように思います。こどもの様子、送迎の変更、保護者からの連絡。突発的な対応が入れば、空けていたつもりの時間は先にそちらへ使われます。
つまり「空いたら育成」は、設計の時点で「忙しい日ほど育成が消える」仕組みになっています。忙しい日こそ支援の場面は濃く、振り返る材料も多いのに、その日に限って育成がゼロになる。この逆転が起きてしまいます。
「気持ちの問題」にすると、児発管が自分を責めて終わる
育成が進まない理由を「自分の段取りが悪いから」「もっと工夫すれば時間は作れるはず」と考えると、児発管は自分を責めるだけで終わってしまいます。
責めても時間は増えません。私自身の現場での実感としても、問題は気持ちの強さではなく、育成が仕組みの側に置かれているかどうかでした。仕組みになっていない育成は、意志の力で続けようとしても、忙しい週に一度途切れると、そのまま戻ってこなくなります。
新人職員の育成全体の考え方については、放デイの新人育成が「先輩の背中を見て学ぶ」から抜け出せない理由でも書きましたが、育成は「見せる時間」を増やすよりも、「判断を言葉にする場面」をどう設計するかだと思っています。
まず仕組みにできる3つのこと
仕組みといっても、大げさな制度は必要ありません。私が現場で現実的だと思うのは、次の3つです。どれも「新しい仕事を増やす」のではなく、今ある流れの中に小さく埋め込む形です。
1. 週の予定に、先に育成の枠を置く
育成の時間は、予定が全部入ったあとの余白に置くのではなく、週の予定を組む段階で先に置くのが基本です。
長くなくてかまいません。週に一度、短い枠でいいので、「この時間は職員と場面を言葉にする時間」と先に決めてしまう。先に置かれた枠は、よほどのことがない限り守られます。逆に、余白に置かれた育成は、ほぼ毎週のように後ろへ流れます。
枠の中身は、次に紹介する「1場面だけの振り返り」で十分です。枠と型がそろって初めて、忙しい日でも育成がゼロになりにくくなります。
2. 場面を1つだけ言葉にする、短い振り返りの型を持つ
振り返りは、1回の支援を全部振り返ろうとすると重くなります。型として決めるのは「今日の場面を1つだけ言葉にする」ことです。
たとえば送迎のあとや記録を書くタイミングで、「今日、あの場面で自分はどう判断したか」を職員が短く言葉にし、児発管が短く返す。それだけです。1場面に絞るから短く終わり、短いから続けられます。
研修の内容を現場の場面に置き換える振り返りの考え方は、放課後等デイサービスの研修が現場に生かせない理由と、事業所内でできる振り返りの形で詳しく書きました。あちらの振り返りも、型は同じ「自分の場面を言葉にする」ことです。研修の週だけの行事にせず、日常の型として持つかどうかが違いなのだと思います。
3. 記録や申し送りに、育成の観点を1行足す
新しい記録様式を作る必要はありません。今ある記録や申し送りに、「判断の理由」を1行足すだけで、記録が育成の材料に変わります。
「何をしたか」だけでなく、「何を見て、そう判断したか」。この1行があると、あとで職員と一緒に見返したときに、「次はどうするか」を話す出発点になります。記録を書く時間はもともと予定に入っているので、時間の設計を変えずに済むのも、この方法の現実的なところです。
もちろん、1行足すこと自体が目的ではありません。書かれた理由を、枠の中で短く言葉にし合う。3つの仕組みは、つながって初めて意味を持つと思っています。
よくある質問
Q. 育成の時間は、どれくらい確保すればいいですか?
長さよりも、週の予定の中に先に枠として置かれているかどうかが大切だと思っています。短い枠でも、毎週決まって職員と場面を言葉にする時間があるほうが、「空いたときにまとめて」という形より続けやすいと感じています。
Q. 忙しい日が続いて、枠を置いても守れません。どうすればいいですか?
守れなかった週を責める必要はありません。枠が消えた週は、記録や申し送りに判断の理由を1行残すところまでを最低限の形にして、翌週の枠でその1行を言葉にし合う。仕組みが複数あると、1つが崩れても育成が完全にゼロにはなりにくいと思います。
Q. 短い振り返りだけで、職員は育つのでしょうか?
一度の振り返りで大きく変わるものではないと思います。ただ、場面を言葉にする小さな積み重ねが、職員の「自分はどこで迷うのか」という気づきや、児発管が支援の現在地を見る材料にはなっていくと、現場では感じています。
まとめ:育成の時間は、気持ちではなく設計で作る
児発管に育成の時間がないのは、気持ちの問題ではなく、時間の設計の問題です。育成を「空いた時間」に頼るのをやめて、週の予定に短い枠を先に置き、1場面だけを言葉にする型を持ち、記録に判断の理由を1行足す。どれも小さい仕組みですが、小さいからこそ忙しい現場でも回り続けます。
まずは今週の予定を見て、育成の枠が「余白」に置かれていないかを確認してみてください。そこから設計を変えていくことが、育成を続ける第一歩なのだと思います。
著者について
長 純(ちょう じゅん)。埼玉県入間市で放課後等デイサービスを運営する、現役の児童発達支援管理責任者(児発管)です。現場で職員育成の仕組み化に取り組む中で、療育人材育成AI「しえんちゃん・まなぶくん」の開発にも携わっています。製品については、よければ製品ページをご覧ください。
