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放デイの職員育成は、点数ではなく「現在地」から始める|評価の前に知りたいこと

地図の現在地ピンを前に、職員と管理者が次の一歩を話し合う放課後等デイサービスの場面

職員の支援力を、点数やランクで評価することから育成を始めようとすると、現場ではうまく回らないことが多いように感じます。評価される場では、職員は自分の迷いや弱みを口にしにくくなりますし、点数は「次に何を伸ばせばいいのか」を教えてくれないからです。

私が育成の出発点に置きたいのは、点数ではなく「現在地」です。今、どの場面では迷わず動けていて、どの場面で判断に迷うのか。それが言葉になっていれば、育成の話し合いは「頑張りましょう」ではなく、次の一歩を決める場になっていきます。

この記事では、評価が先に立つと育成が止まりやすい理由を整理したうえで、現在地を言葉にしていくための考え方と、まずできる工夫を紹介します。

この記事の要点

  • 点数やランクによる評価が先に立つと、職員は迷いや弱みを隠しやすくなり、育成に必要な情報が管理者に届かなくなります
  • 育成の出発点は、点数ではなく「どの場面で迷わず動けて、どの場面で迷うか」という現在地を言葉にすることです
  • 現在地の把握は大きな仕組みでなくてかまいません。場面を絞って聞く、段階の言葉で整理する、定期的に更新する。この3つから始められます

評価が先に立つと、育成に必要な情報が届かなくなる

職員育成の話になると、「まず評価の基準を作らなければ」という順番で考えがちです。もちろん、処遇や役割を決めるうえで評価が必要な場面はあります。ただ、育成の出発点に評価を置くと、現場では別のことが起きやすいと感じています。

評価される場では、迷いは言葉になりにくい

自分の支援が点数やランクに結びつくと分かっている場では、職員は「分からない」「迷っている」と言いにくくなります。迷いを口にすることが、そのまま低い評価につながるかもしれないからです。

職員が「分からない」と言える職場の話は、職員が『分からない』と言える職場は、なぜ育成が進むのかでも書きましたが、育成にいちばん必要なのは、本人がどこで迷っているかという情報です。評価が先に立つと、その情報がいちばん届きにくくなる。この順番のねじれが、育成を止めてしまうのだと思います。

点数は、次に何を伸ばすかを教えてくれない

もう1つの問題は、点数という形そのものにあります。「支援力70点」と言われても、本人にも管理者にも、次に何をすればいいのかは分かりません。点数は結果を1つの数字に圧縮してしまうため、場面ごとの得意・不得意の違いが見えなくなってしまうのです。

たとえば、集団活動の場面では落ち着いて動ける職員が、保護者対応の場面では言葉に詰まってしまうことがあります。逆に、こどもとの1対1の関わりは丁寧なのに、記録の場面になると手が止まる職員もいます。育成で知りたいのは、合計点ではなく、この「場面ごとの違い」のほうなのだと思います。

一度ついたラベルは、場面が変わっても残りやすい

点数やランクは、一度決まると、その職員の見方そのものを固定してしまいがちです。「あの人はまだ初級だから」と見ると、その職員が特定の場面で見せた良い判断にも目が向きにくくなります。逆に「ベテランだから大丈夫」と見ると、迷いを抱えている場面が見過ごされやすくなります。

職員によって支援に差が出る背景には、こうした見方の固定も関係しているように感じます。支援の差そのものへの向き合い方は、職員によって支援に差が出るとき、管理者がまず言葉にすべきことでも書きましたが、判断の理由と同じように、職員の現在地も「場面ごとに違うもの」として見ることが出発点になるのだと思います。

現在地を知るとは、場面ごとの違いを言葉にすること

では、点数の代わりに何を置くのか。私が置きたいのは、「今どこにいて、次に何を伸ばすか」を場面ごとに言葉にした、現在地の把握です。

現在地は、地図でいう「現在位置」と同じ役割をする

目的地までの道順は、現在位置が分からなければ決められません。育成も同じで、「もっと支援力を上げてほしい」という目的地だけでは、本人も管理者も、今日から何を変えればいいのかが決められないのです。

現在地が言葉になっていれば、話は具体的になります。「集団の場面は任せられる。次は、活動の切り替えで気持ちが揺れるこどもへの対応を、一緒に場面を振り返りながら広げていこう」。こうした一歩は、現在地があって初めて決められるのだと思います。

現在地は「人」ではなく「場面」につける

このとき大切なのは、現在地を職員本人への評価としてではなく、場面ごとの状態として言葉にすることです。「あなたは初級です」ではなく、「この場面では一人で判断できている」「この場面では、まだ迷いながら動いている」という形です。

人につけたラベルは外しにくいですが、場面ごとの現在地は、経験を積めばその都度更新できます。「前は迷っていた場面で、迷わず動けるようになった」という変化が見えること自体が、本人にとっての手応えにもつながっていくのだと思います。

現在地を言葉にする、3つの工夫

現在地の把握というと、評価シートのような大きな仕組みを思い浮かべるかもしれません。ただ、現場で続けられるのは、小さな形から始めたものだけだと感じています。

1. 場面を絞って、「迷わず動けた場面」から聞く

すべての場面について現在地を整理しようとすると、面談も記録も重くなります。まずは、放デイの日常でよく出会う場面をいくつかに絞り、「最近、迷わず動けたと感じた場面はどれか」「逆に、判断に迷った場面はどれか」を聞く形から始めるのが現実的です。

ポイントは、できていない場面からではなく、動けた場面から聞くことです。動けた場面が言葉になれば、現在地の「ここまでは来ている」が先に見えます。そのうえで迷った場面を聞くと、本人も「次はここ」という形で受け取りやすくなるのだと思います。児発管が育成の時間をどう確保するかについては、児発管が職員育成に時間を割けない理由は『時間の設計』にあるでも書きましたが、すでにある面談や振り返りの時間の中で聞く形なら、新しい時間を増やさずに始められます。

2. 段階の言葉で整理し、点数にしない

聞き取った現在地は、点数ではなく段階の言葉で整理します。たとえば「先輩と一緒なら動ける」「一人で判断して動ける」「場面の先を読んで準備できる」「他の職員の迷いに助言できる」といった段階です。

段階の言葉には、点数にはない利点があります。本人にとって「次の段階はどんな姿か」が見えることです。70点から80点への道は見えなくても、「一人で判断できる場面を、あと1つ広げる」という次の一歩は、具体的に思い浮かべることができます。管理者の側も、段階が分かれば、任せる場面の広げ方を段階に合わせて考えやすくなります。

3. 現在地は、一度決めたら終わりにせず更新する

現在地は、職員の成長とともに動いていくものです。一度整理して終わりにすると、それ自体が新しいラベルになってしまいます。学期ごと、あるいは面談のたびといった区切りで、「前回から動けた場面が増えたか」「新たに迷うようになった場面はないか」を短く更新していく形が向いていると思います。

更新のたびに変化が見えると、育成の話し合いは「評価を伝える場」から「変化を確認し合う場」に変わっていきます。変化を一緒に確認できることが、職員が迷いを言葉にし続けられる土台にもなるのだと感じています。

よくある質問

Q. 職員の評価制度そのものが不要ということでしょうか?

そうではありません。処遇や役割分担を決めるうえで、評価の仕組みが必要な場面はあります。ただ、育成の出発点に評価を置くと、職員が迷いを言葉にしにくくなり、育成に必要な情報が届かなくなります。評価は処遇のために、現在地の把握は育成のためにと、役割を分けて考えることが大切だと思っています。

Q. 現在地を把握するには、結局は管理者の主観になってしまうのではないでしょうか?

管理者が一方的に決める形だと、主観に寄りやすくなります。だからこそ、本人自身に「迷わず動けた場面」「判断に迷った場面」を言葉にしてもらう形が向いています。本人の実感と管理者の見方を並べて、違いがあるところから話し合う進め方なら、主観の押しつけにも、自己評価だけにも寄りにくくなります。

Q. 現在地を本人に伝えると、落ち込んでしまう職員もいるのではないでしょうか?

伝え方によると思います。「あなたはまだこの段階です」と人にラベルを貼る形ではなく、「この場面では一人で動けている」「この場面は次に一緒に広げていこう」と場面ごとに伝える形なら、できている部分と次の一歩がセットで届きます。現在地は、足りないところを指摘するためのものではなく、次の一歩を一緒に決めるための材料だと考えています。

まとめ:育成は、点数ではなく現在地から始める

職員の育成が進むかどうかは、評価の精度よりも先に、「今どこにいて、次に何を伸ばすか」が職場で言葉になっているかで変わってくるように感じます。点数は順位をつけることはできても、次の一歩は教えてくれません。

まずは次の面談や振り返りで、一人の職員について「迷わず動けている場面」と「判断に迷っている場面」を1つずつ言葉にしてみてください。その2つが見えることが、育成の現在地になっていくのだと思います。

職員の変化に気づくという面については、放デイの職員が辞める前に、管理者が見ておきたい3つのサインでも書いています。

著者について

長 純(ちょう じゅん)。埼玉県入間市で放課後等デイサービスを運営する、現役の児童発達支援管理責任者(児発管)です。現場で職員育成の仕組み化に取り組む中で、療育人材育成AI「しえんちゃん・まなぶくん」の開発にも携わっています。製品については、よければ製品ページをご覧ください。

製品ページ:https://www.attraction-llc.tokyo/products/ryoiku-ai/

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放課後等デイサービス・福祉のAI導入支援と職員研修個別支援計画や記録・お便りなどの書類業務と、職員の育成をAIで支えます。代表は現役の児童発達支援管理責任者です。

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